<日時>
2024年6月9日(日) 10:00-11:30
<テーマ>
連続講座:言葉の力は、生きるチカラ
第4回「論戦に強くなる、言葉で負けない人になろう」
<講師>
ひきた よしあき さん
<受講後記>
「論戦」という言葉を聞くと、「言葉のケンカ」というイメージを持ってしまう人が多いのではないでしょうか。そもそも論戦に巻き込まれるのを避けてしまう人もいるでしょう。
ディスカッションともいわれる「論戦」は議論する相手を納得させ、合意を得ながら、高次な結論を導き出す事が目的です。
議論をする中で、お互いを受け入れるリスペクトの気持ちが生まれそうもない場合、一旦論戦を引き上げ、相手の気持ちを和らげる会話をしてみましょう。
防御と攻撃の応酬ではなく、建設的な対話が新しい価値を生み出すからです。
否定から入る人、拒絶するタイプの人に対して論戦を行う時に、「じゃあこれはどう?」、「これならいかが?」のように話題を横に展開して選択肢を増やしてしまいがち。これでは相手は受け入れてくれません。粘り強く話を縦に深掘りしていきましょう。
さて、ここからは実際講義中に行った演習に基づいて、論戦に強くなる方法をご説明いたします。
①「Yes, butの法則(おっしゃる通りです、しかし・・・)」
相手の意見を一度受け入れてから、自分の意見を述べる方法です。この方法を使うと、防御と攻撃の応酬にならず、相手の行動を自然に動かすことができます。例えば、お坊さんや僧侶はこの技術に長けており、まるで論戦を仕掛けているようには見せずに、相手の行動をいつの間にか変えてしまいます。
②ヘーゲルの「弁証法」
「弁証法」は議論を深めて高次の正解を導き出すための最高のテクニックです。欧米では、「意見」には必ず「反対意見」が存在することを前提に、より「高次の解決策」を導き出すこの弁証法の教育を子どもの頃から受けています。
フランスの小学生は、ある議論の際にノートを三分割にし、「賛成意見」「反対意見」「解決策」の記入欄を書いて実践しています。凄いですね!あくまでも「人格否定」にならないように。高次の解決策を出すことが目的です。日本のように「多数決で決める」なんてしないんですね。
「どちらとも言えない」や「いろいろな考えがある」なんて発言はタブー。これは論戦ではなく、高みの見物です。一見自分を賢そうに見せてるつもりでも、まったく賢そうに見えません。反対意見を恐れずにいきましょう。
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演習1:「バスで小学生がお年寄りに席を譲るべきか?」
【反対意見】
「私がそんなに年寄りに見えるのか!」と怒られた事がありトラウマに。もう二度と声をかけることはしたくないので、席を譲るのは反対です。
【賛成意見】
譲るべきだし、そもそも声をかけるという事が大前提。
【高い次元の解決策】
・「私がそんなに年寄りみ見えるのか!」と言われたら、「疲れてそうだったので」と譲る。理由の切り口を変える。
・お声がけの言葉を変える。「変わりましょうか」ではなく「どこまでいかれるのですか?」
相手をよく見てお声掛けをするのが大事
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③小論文を学び直して主張のテクニックを覚える
小論文とはある課題にYesかNoかを答えて、その理由を相手に伝わるように書くことです。
1.問題提起 〜だろうか?
2.意思表示(Yes or NO)確かに〜、反論つぶし
3.展開 なぜなら、その背景には、そもそも
4.結論 したがって
「反論つぶし」とは、論戦の時に自分の意見だけを主張するのではなく、相手がどんな反論をしてきそうかをあらかじめ予測し、準備しておくこと。「あなたがおっしゃる〇〇という事は重々承知です。ですが・・・」のような使い方。この方法を使う事によって、自分の意見だけ話す人だったり、考えが浅はかだ、という印象が薄れ、話を聞いてくれます。
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練習2 人をあだ名で呼ぶことに賛成か、反対か?
【反対意見】
1.反対です。
2.確かに、相手に親しみを感じさせることはできるかもしれません。※反論つぶし
3.でもそれはこちらの考えであって、相手の認識によっては不快と思う人もいるかもしれません。
4.だからあだ名で呼ぶのは反対です。
【賛成意見】
1.賛成です。
2.確かに、相手の嬉しくないような特徴のあだ名をつけることによって相手が傷つく場合があるのもわかっています。 ※反論潰し
3.自分があだ名で呼ばれるの嬉しいです。
4.だから賛成です。海外では自分をこう呼んでくれという習慣もあります。
【解決策】
自分でなんて呼ばれたいか申告できるような世の中になればよいのでは!
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④私たちは「質問の仕方」を習っていない
たびたび耳にする「最後に質問はありませんか?」という言葉。あれ、困りませんか?どのように質問するかを習っていないので、ついつい「感想」を言ってしまいがち。長々と感想を言った挙句に我に返って最後に質問をしてしまう始末。質問には型があります。
・起(前提)
・承(具体的内容)
・転(私見・仮説)
・結(答えて欲しいポイント)
という構成で質問することで、相手にわかりやすく、建設的な質問ができます。常にクエッションメモをつけ、自分の意見や仮説を交えた質問をする習慣を身につけましょう。
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演習3「なぜ乙姫は浦島太郎に玉手箱を渡したのか?」という議論を型にあてはめて質問してみよう
<起 前提>
浦島太郎に玉手箱について質問いたします
<承 具体的内容>
なぜ乙姫は、浦島太郎に玉手箱を渡したのでしょうか?
<転 私見・仮説>
私は、受け取れば開けたくなるのが人情だと考えます
<結 答えて欲しいポイント>
玉手箱を渡した乙姫様の気持ちについて、先生の意見をお聞かせください。
という感じです。
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このように、雑談力や論戦力を高めるためのスキルを磨くことで、より豊かなコミュニケーションが可能になります。反対意見を怖がらず、建設的な対話を心がけること、そして議論の先の高次元の解答、解決策を導き出すことが最重要目的なんだということを忘れないことを肝に銘じておきましょう!!!
<受講者の声>
●過去最高の回です。論戦に強く、言葉で負けない。言葉に勝ち負け、など本当はないのだ、反対意見は、高次元へのステップなのだ、と素直に思えるようになってきていることがとても嬉しいです。
●今回も神回でした!ヘーゲルの弁証法が、クエスチョンメモの取り方、質問の仕方などにつながって、とてもわかりやすかったです。Yes,butの法則も心から共感しているかによって伝わり方がまったく違うことがわかりました。今後も講義だったり、お客様と関わっていく中で実践していきたいと思います。
●今回も大変内容の濃い講義でした。本を読んだだけでは得られない即戦力になる肝になる内容に感謝致します。この内容をもっと早く知っていれば、我が家も今以上、建設的な子育てになっていたと思いました。
●やっとリアル時間に受講ができました!ひきた先生の生の言葉をそのまま受け取ることができ感激です。講座で学んだことについても日常生活でも仕事でもすぐに実践できることばかり。とてもわかりやすい例えから始まり構文に当てはめたら「あらま〜」といつの間にか伝わりやすい会話になっていて。納得できるところまで導いてくださり感謝いたします。話すことは何気ない毎日の中にありますが、伝わること伝えることはやはりちゃんと学んで理論に基づいたほうが良い事なのだと改めて感じました。
●本日の講座も楽しくてとても勉強になりました。ありがとうございました。教えていただいた論戦テクニックなどをぜひ実践して参りたいと思います。
●弁論法、勉強になりました。ひきた先生のコミュニケーション術は事例が大変わかりやすく、噛み砕いて理解を促していただけます。感情論でもなく論理的で腑に落ちます。どちらがいいか?ではなく、どうしたらいいか?を考えられるよう、ヘーゲルノートを活用したいと思います。本日もありがとうございました。
<ひきたよしあき さん情報>
●7月にひきたさんの新刊が出ます。
「あなたを全力で肯定する言葉(4777831264 辰巳出版 2024/7/2 発売予定)」
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